これは、2014年頃の僕の体験談です。東京の不動産屋、それもグループ連結売上が何十億円もあるような会社のとある店舗でのお話です。以下、A社と表記します。
強引に始まる内見ツアー
当時の部屋探しは、不動産屋さんに予算を伝えて物件を紹介してもらい、気に入った物件+αを営業車で回り内見するのが主流でした。
希望条件と予算を伝えると、それに沿った物件を紹介してくれるのは良心的な不動産屋です。たいていは、相手都合で紹介が進むからです。予算オーバーはザラでした。
僕が訪ねたA社の営業マン(以下、営業B)も、例に漏れず希望条件など全部無視して「営業Bのオススメ物件」ばかりを紹介してきました。正直1ミリも興味がもてません。
そこで、帰ろうと思い口を開いたのですが・・・
僕
すみません、また
営業B
すぐ車持ってきますんで。待っててください!!
僕の発言を遮るように話を重ね、そして店舗の裏手へスゥーっと消えていきました。この時点で店から立ち去れば良かったのですが、失礼な気もして言われた通り待ってしまいました。
まもなくして車が到着、営業Bが足早に戻ってきました。
営業B
ここ止めてるとヤバいんすよ。早く乗ってください!!
忙しない男、営業B。かくして彼との悪夢のような内見ツアーが始まったのです。
1軒目:自称クリーニング済み物件
1軒目はクリーニング済みで即入居可の物件、1階です。外見はタイル張りで画像で見たよりキレイでした。
(意外といいかも? 警戒しすぎだったのかな‥‥)
砂粒ほどの期待を持ちながら玄関のドアを開けたときでした。
ムワッっとする湿気の塊みたいなものとぶつかったような、そんな変な空気を感じました。幽霊とかそういうった曖昧なものではなく、地下鉄で体験するようなあの空気感。
次に目に飛び込んできたのは、黄ばんだ小汚いボロボロの壁紙と穴の開いた浴室の戸。穴から覗く浴室は薄暗くどこか不気味です。
(ん、これがクリーニング済み・・・?)
僕
汚いし、お風呂の戸に穴開いてるんですけど‥‥
浴室の明かりをつけようとスイッチに手を伸ばしかけた瞬間、そこにすかさず営業Bが割り込んできました。
営業B
あ、浴室は今電気つかないんで触らないで! 部屋見ましょう!!
(えっ、電気も壊れてるの?)
聞きたいことは山ほどありましたが、建物の不具合についてはまともに取り合えってもらえませんでした。
次は洋室です。部屋を見ながら営業Bに質問しました。
僕
ところで、ネット回線は?
営業B
大家さんに聞いてみますね。
「あー、もしもし、A社の営業Bです。今○○○物件内見中でネット回線について聞かれてるんですが、あっそうですか~わかりました!」
すぐに問い合わせてくれましたが、その結果は・・・
営業B
大家さん、詳しくないんでよくわからないみたいです。多分大丈夫っす!
大丈夫らしいです。全く信用できませんが・・・。
肝心の部屋ですが、フローリングが腐っているのかふわふわしている部分もあって居心地が悪く、さらにベランダの窓枠部分には黒カビがびっちり。とても住む気にはなれませんでした。
この部屋を出たときに気づいたんですが、集合ポスト付近にチラシが散乱していてめちゃくちゃ汚かったのが印象的でした。住人の民度が低いのかもしれません。
次の物件です。
2軒目:まさかの廃墟、7万円
営業B
ここは駅から10~15分ほどですが、広くておすすめです。家賃は7万ですね。でも値下げ交渉できます!
ツッコミどころ満載の説明を受けながら紹介された2軒目は、エレベーターなし4階建てマンションの1階のお部屋。外装が真っ黄色のとても目立つ建物です。
でも外壁は薄汚れているし、通路のいたるところにゴミが散乱しています。それも木片やらビニールやら、それはまるで廃墟のアレ。割と新しめの廃墟といった感じの佇まい。
若干サビの浮いたドアの付近にはクモの巣が張っていました。もう嫌な予感しかしませんが、それを超越する光景を目の当たりにするとは思いもしませんでした。
ギギギギギィぃぃッ・・・
嫌な音を立てながら開かれるドアの先に広がっていたのは、まるで火災現場のような部屋全体が煤けた部屋でした。
壁紙はところどころ剥がれているし、焼け焦げたかのように真っ黒です。天井は一部剥落しているし、キッチンは金属部分が盗まれたかのような惨状でガタガタ、おまけに収納棚の扉は外れて床に転がっています。床は絨毯が大胆にめくりあがっていて、大部分が黒く汚れており不衛生。エアコンは昭和の時代から使っていそうな超旧式のものが斜めになっていて、ぎりぎり壁にとどまっているといった具合です。かろうじて無事なのはお風呂とトイレだけ、と言っても少し砂埃をかぶって汚れています。
一番驚いたのは窓。なんと1枚外れてベランダ側に倒れており半開きです。1階の部屋なので人も野良猫も侵入可能。控えめに言って立派な廃墟、お家賃なんと7万円。レオパレスもびっくりです。
僕
廃墟にしか見えないんですが、リフォームされるんですか?
営業B
価格帯的にこんなもんっすよ。あ、エアコンはまだ使えるので交換はナシっすねぇ。
廃墟物件7万円、相場平均らしいです。気を取り直して3軒目へ。
3軒目:壁崩壊につきカニ歩き物件
営業B
エレベーター付き最上階の物件、ここはオススメですよ!
1軒目、2軒目とは比較にならないほどキレイな外装、そしてエレベーターつきです。画像で見たときよりも部屋は広く見えたのですが、そこは営業Bのオススメ物件。何もかもが信用できません。
営業B
それじゃ行きましょう。静かにお願いします。
そう言うと彼は階段を上り始めました。
「ねぇ、エレベーターは?」と思いつつも営業Bの後に続き、そして部屋へ。今回の物件は通路もキレイで静かでした。人が住んでいる気配すらないほどに。
玄関に入るなり、なぜか小声て説明されました。
営業B
契約したらエレベーター使えるんで、安心してください。
よかったです。課金したらエレベーター使えます。
それはさておき、部屋を見たときの第一印象は「キッチン通路がクソ狭い」でした。画像では広く見えたのは、広角レンズを使っていたからでしょう。これは不動産業界では割とよく使われる手法です。
問題のクソ狭キッチン通路ですが、どのぐらい狭いかというと、人間ひとり分の幅しかなく普通に歩くと肩をこする程度。しかも、壁は触るとポロポロと崩れる謎仕様。服が壁に接触すると白い粉がつくので不快です。
そんなわけで、カニ歩き移動推奨です。大きめの家具は持ち込めるのか、まだ内見なのに不安しかありません。
よく見ると床には白い粉末状の元壁が散らばっていました。営業Bがいつの間にか自分だけスリッパを履いていたのはこのためでしょう。
カニ歩きでキッチンを抜けた先には洋室があります。しかしキッチンと洋室の間には階段ひとつ分ほどの段差が・・・。それに気づかず見事に踏み外しこけそうになるも、瞬間的に壁に手をつき事なきを得た僕ですが、その代わり壁が少しポロリ。この段差は危険かもしれません。
僕
壁がポロポロ崩れているみたいですが、、、
営業B
日当たりいいし、最上階なんで景色も最高じゃないですか!
僕
あの、すみませんが
営業B
この辺なんてテレビを置くのにちょうどいいっすよ!
僕
ここもイヤです。
すごいスルースキルをお持ちのようです。しかし、この物件にも難色を示すと営業Bの顔色が曇り始めました。
営業B
‥‥では車に戻りましょうか。
下に戻るときはエレベーターでした。
営業車に乗り、エンジンをかけ、3軒目を後にします。このまま店舗に戻るのかと思った矢先、運転しながら営業Bが言いました。
密室の恐怖!営業車で軟禁・脅迫
営業B
どの物件で契約進めます?
耳を疑いました。今日見た物件は全部ノーサンキュー、その旨もしっかり伝えたと思っていたからです。ところが・・・
営業B
あのねぇ、こちらも仕事でやってんだからさあ。どれでもいいから契約してもらわないと困るんすよ。
彼は、さらに語調を強めて続けます。
営業B
契約するまで帰さないよ? 山まで運んで置いてくることだってできるんで。
もはや脅迫です。このタイプの人は、反論しても何食わぬ顔で犯行に及ぶのでしょう。少なくともこの時の僕にはそう思えました。
僕
‥‥で、では最初の物件で‥。
恐怖に駆られた僕は、しかたなく申し込みと内金の支払いを済ませ店を後にしました。
でもその物件には絶対に住みたくなかったので、翌日店舗に行き、彼がいないタイミングを見計らって取り消しを申請。無事返金もされて事なきを得ました。
こういった場合、不動産屋がヤバいのか営業マンだけの問題なのか、僕には皆目見当もつきません。意見がありましたらコメントをください!
今、後悔していること
当時は、何をされるかわからない恐怖のあまり泣き寝入りしていましたが、グーグルの低評価レビューを見た限り似たようなことがまだ続いているようなので記事にしました。高評価が付きまくっていて低評価が目立たなくなっていますが、レビュー工作されているような気もします。高評価はお金さえ積めば買えるので。
今ではあの時の対応を悔いています。申し込みさせられたその日に警察に行って被害届をだし、消費者庁や都庁、法テラスなどに相談すればよかった、と。こういうケースは通報されたら一発で営業停止されるそうです。
不動産屋さんに足を運ぶ際には、こういう営業マンには十分気をつけてください。
おわり。