もしも、こんな強引な不動産屋と一緒に内見にいってしまったら?
これから僕の恐怖体験をお話しします。不動産屋さんに行くのが怖くなるかもしれませんが、エンターテイメント感覚でお楽しみいただければと思い‥ます‥‥。
【事の発端】内見ツアーは突然に‥‥
これは2014年頃、東京都内のとある不動産屋で体験したお話です。
当時の部屋探しは、不動産屋さんに予算を伝えて物件を紹介してもらい、気に入った物件+αを営業車で回り内見するのが主流でした。
希望条件と予算を伝えると、それに沿った物件を紹介してくれるのは良心的な不動産屋です。たいていは相手都合で紹介が進むからです。予算オーバーはザラでした。
この日僕が訪れた不動産屋(以下、A社)は、グループ連結売上が何十億円もあるような規模の会社です。
そこそこ大きい会社なのできっと大丈夫。‥‥そう思ってお店に入りました。
さて、お店に入るなり出てきたのは、細見だけど眼光の鋭い黒いスーツの男性営業マン(以下、営業B)。パンツの左ポケットが擦り切れており、下地の白い生地が顔をのぞかせていました。くたびれたスーツが少し気になります。
営業Bと軽く挨拶を済ませると、家賃の予算と希望条件を伝えました。
ところが、紹介されたのは希望条件と全く合わず予算も超えているものばかり。物件の図面には部屋の写真もあまりなく、正直1ミリも興味がもてません。
そこで帰ろうと思い口を開いたその時‥‥!
僕
あの、すみません
営業B
すぐ車持って来るんで。待っててください!!
僕の発言を遮るように話を重ね、お店の裏手へスゥーっと消えていきました。この時点で逃げれば良かったのですが、失礼な気もして言われた通り待ってしまいました。
まもなくして車が到着、営業Bが足早に戻ってきました。
営業B
ここ止めてるとヤバいんすよ。早く乗ってください!!
せわしない男、営業B。かくして彼との悪夢のような内見ツアーが始まったのです。
【1軒目】すみません。穴、開いてますが‥
1軒目はクリーニング済みで即入居可・駅から徒歩8分の1階1K物件です。外見はタイル張りで画像で見たよりキレイでした。
(意外といいかも?)
砂粒ほどの期待を寄せながら玄関のドアを開けたそのときです。
ムワッ
湿気の塊みたいなものとぶつかりました。幽霊とかそういうった曖昧なものではなく、地下鉄で体感できるあの空気感‥といえば伝わるでしょうか。
次に目に飛び込んできたのは、黄ばんだ小汚いボロボロの壁紙と穴の開いた浴室の戸。
僕
戸に穴が開いているんですけど‥
穴から覗く浴室は薄暗くどこか不気味です。浴室の明かりをつけようとスイッチに手を伸ばしかけた瞬間、すかさず営業Bが割り込んできました。
営業B
あ、浴室は今電気つかないんで触らないで! 部屋見ましょう!!
(えっ、電気つかないの?)
内見は営業Bのペースでどんどん進んでいきます。次は洋室です。部屋を見ながら彼に聞きました。
僕
ところで、ネット回線は?
営業B
大家さんに聞いてみますね。
「あー、もしもし大家さん、A社の営業Bです。お世話になってます。今○○○の内見でネット回線について聞かれてるんですが‥‥(少し間をおいて)‥‥あっそうですかぁ~わかりました!」
営業Bは電話を切るなり、僕のほうに振り返り説明を始めます。
営業B
大家さん、ネットに詳しくないんでよくわからないみたいス。でも多分大丈夫っス!
なんか大丈夫らしいです。信用できる要素など微塵もありませんが。
肝心の部屋は、フローリングの状態が悪くベランダ側の窓枠部分には黒カビがびっちり。喘息気味な僕はとても住む気にはなれません。1軒目の内見はこれで終わりです。
玄関から出てエントランスに向かう途中であることに気づきました。入口から死角になってる所に集合ポストがあるのですが、そのうちの2つは壊れていて付近にはチラシが散乱しています。住人の民度が低いのかもしれません。
次の物件です。
【2軒目】うそでしょ‥?まさかの高級廃墟
営業B
ここは駅から15分ほどですが広くておすすめです。家賃は7万、でも値下げ交渉できます!
2軒目はエレベーターなし4階建てマンションの1階のお部屋。外壁が真っ黄色のとても目立つ建物です。
でも薄汚れているし、通路のいたるところにゴミが散乱しています。それも木片やらビニールやら、それはまるで廃墟のアレ。割と新しめの廃墟といった感じの佇まい。
若干サビの浮いたドアの付近にはクモの巣が張っています。もう嫌な予感しかしませんが、それを超越する光景を目の当たりにするとは思いもしませんでした。
ギギギギギィぃぃッ・・・
嫌な音を立てながら開かれるドア。その先に広がっていたのは、まるで火災現場のような部屋全体が煤けた部屋でした。
壁紙はところどころ剥がれているし、焼け焦げたかのように真っ黒です。
天井は一部剥落しているし、キッチンは金属部分が盗まれたかのような惨状でガタガタ、おまけに収納棚の扉は外れて床に転がっています。
床は絨毯が大胆にめくれ上がっていて、大部分が黒く汚れています。地面のほうがまだ衛生的なレベル。
エアコンは昭和の時代から使っていそうな超旧式タイプ。それも大きく斜めに傾いていて、ギリギリ壁にとどまっているといった具合です。
かろうじて無事なのはお風呂とトイレだけ、と言っても少し砂埃をかぶっていますが。
一番驚いたのは窓。なんと1枚ベランダ側に倒れており半開き状態です。しかも1階の部屋なので人も猫も出入り自由。
これでお家賃はなんと7万円! 廃墟好きにも全く刺さらないクソ物件です。
僕
廃墟にしか見えないんですが、リフォームされるんですか?
営業B
価格帯的にこんなもんっすよ。あ、エアコンはまだ使えるので交換はナシっすねぇ。
妥協にもほどがある。こんな高級廃墟、誰が好き好んで借りるのでしょうか。
そしてこの営業B、やっぱりなんかおかしい‥‥。
なんとか気を取り直して3軒目へ。
【3軒目】ヤバい不動産屋のイチ押し物件
営業B
エレベーター付き最上階の物件、ここはイチ押しですよ!
1軒目、2軒目とは比較にならないほどキレイな外装、そしてエレベーターつきです。しかしそこは営業Bのイチ押し物件。何もかもが信用できません。
営業B
それじゃ行きましょう。静かにお願いします。
そう言うと彼は階段を上り始めました。
(ねぇ、エレベーターは?)
そう思いつつも営業Bの後に続き、そして部屋へ。今回の物件は階段も通路もキレイで静かでした。人が住んでいる気配すらないほどに‥‥。
玄関に入るなり、なぜか小声て説明されました。
営業B
契約したらエレベーター使えるんで、安心してください。
課金したらエレベーターが使えるようです。
さて肝心の部屋ですが、第一印象は「キッチン通路がクソ狭い」でした。人間ひとり分の幅しかなく、普通に歩くと肩をこすり服に白い粉がつく有り様。
なぜ壁がボロボロなのか分かりませんが、服が汚れるのでカニ歩き移動推奨です。
よく見ると床には元「壁」と思われる白い粉が散らばっていました。営業Bがいつの間にか自分だけスリッパを履いていたのはこのためでしょう。
僕
壁がポロポロ崩れているみたいですが、、、
営業B
日当たりいいし、最上階なんで景色も最高じゃないですか!
僕
あの、、、
営業B
この辺なんてテレビを置くのにちょうどいいっすよ!
特殊な会話術をお持ちのようです。しかし、この物件にも難色を示すと営業Bの顔色が曇り始めました。
営業B
‥‥では車に戻りましょうか。
下に戻るときは何故かエレベーターでした。
営業車に乗り、エンジンをかけ、3軒目を後にします。このまま店舗に戻るのかと思った矢先、運転しながら営業Bが言いました。
密室の恐怖!営業車内で○○された
営業B
どの物件で契約進めます?
(‥‥は?)
耳を疑いました。今日見た物件は全部ノーサンキュー、その旨もしっかり伝えたと思っていたからです。ところが‥‥
営業B
あのねぇ、こちらも仕事でやってんだからさあ。どれでもいいから契約してもらわないと困るんスよ。
彼は、さらに語調を強めて続けます。
営業B
契約するまで帰さないよ? 山まで運んで置いてくることだってできるんで。
もはや脅迫です。このタイプの人は、反論しても何食わぬ顔で犯行に及ぶのでしょう。少なくともこの時の僕にはそう思えました。
僕
で、では最初の物件で‥。
恐怖に駆られた僕は、しかたなく申し込みと内金の支払い(1万円)を済ませ店を後にしました。
でもその物件には絶対に住みたくなかったので、翌日店舗に行き、彼がいないタイミングを見計らって取り消しを申請。無事返金もされて事なきを得ました。
今、後悔していること
何をされるかわからない恐怖で泣き寝入りしていました。しかし、「契約を強要する強引な営業」は今もなお行われていることを知り記事にしました。
「契約を強要された」といったレビューは、買収された高評価レビューで見つけづらくなっているのが現状です。
今ではあの時の対応を悔いています。申し込みさせられたその日に警察に行って被害届を出し、消費者庁や都庁、法テラスなどに相談すればよかった、と。こういうケースは通報されたら一発で営業停止されるそうです。
こういう不動産屋に遭遇したらバンバン通報していきましょう!